世界最大規模の変革拠点で、日本企業が直面した問いと可能性
2025年11月、タイガーモブ株式会社は、株式会社DG TAKANOとの共催により、サウジアラビア王国への実践型視察プログラムを実施しました。
本視察は、企業経営者、教育関係者を含む総勢40名以上が参加し、政府機関や先進プロジェクト、現地大学などを訪問するプログラムです。変革の最前線に立つことで、既存の常識や価値観を問い直す貴重な機会となりました。
本記事では、サウジアラビア視察における主要な視察先、現地での対話やフィールド体験、参加者の声、そして日本企業にとっての示唆を、実際の活動内容に即してご紹介します。
サウジアラビアの他にもインドや東欧、アフリカなど視察プログラムが可能です。視察プログラムにご興味のある企業様、ぜひお問い合わせください。
サウジアラビアが変革の最前線である理由
サウジアラビアは、国家変革「Vision 2030」のもと、急速な社会・経済改革を進めています。

脱石油依存を掲げ、観光、再生可能エネルギー、物流、農業、テクノロジーなどの分野で外資誘致を進めながら、国家主導で巨大な都市開発プロジェクトを推進しているのです。
何よりサウジアラビアに圧倒されるのは、これらの変化が、構想段階にとどまるものではなく、すでに現場レベルで具体的な施工・運用フェーズに移行していることです。
都市の再設計やスマートモビリティの導入、都市気候制御など、都市機能そのものを再定義する取り組みが進んでおり、世界の都市計画と比較しても先進的な事例となっています。
視察実施概要と訪問先のご紹介
今回の視察は、サウジアラビア現地でプロジェクトを展開している株式会社DG TAKANOの協力のもとで実施されました。視察期間は11月22日から26日までの5日間で、以下のような主要拠点を訪問しました。
NEOMやThe LINEといった未来都市構想
NEOM(ネオム)は、サウジアラビアの北西部に建設中の次世代スマートメガシティ構想で、国家主導の変革戦略「Vision 2030」の象徴的プロジェクトです。

THE LINEはNEOMの中心プロジェクトで、全長170km、高さ500m、幅200mという直線構造を持つ未来都市です。人口900万人の収容を想定し、単なるインフラ整備ではなく、人の移動、エネルギー、環境、暮らし、仕事、医療、教育の在り方すべてをゼロから再定義するものです。
自動車・道路ゼロ、すべての移動は5分以内という構造により、CO2排出ゼロの都市運営を目指しています。
直線型都市構想が実際に施工中である現場の状況や、道路・自動車を排除した設計思想、再生可能エネルギーのみで稼働する都市運営構想などを、資料と映像を通じて学びました。
現地ではすでに建設が始まり、コア部分における基礎工事・構造設計が進行中です。視察時には、プレゼン資料と模型展示、施工現場の映像により、都市のリアリティと野心的な将来像を実感しました。
都市構想が単なるビジョンではなく、実際の都市機能に置き換えられ始めている様子を、視察を通じて肌で感じることができます。

King Salman Park(KSP)

砂漠地帯の中に広がる都市型緑地の造成を視察しました。
首都リヤドの中心部に位置するKing Salman Parkは、完成すれば「世界最大の都市公園」となり、面積は16平方キロメートル(1,600ヘクタール)に及びます。これはニューヨークのセントラルパークの約4.5倍の広さです。
森林育成により都市気温を5〜8度下げる設計や、植栽の品種、育成環境の管理手法について、現地園芸士の案内を受けながら理解を深めました。園内には、来訪者パビリオンやプロジェクト紹介ゾーンもあり、DG TAKANOとの共同開発による節水ノズルの実装例や、導入後の評価指標も確認することができました。
園芸担当者によると、植生は主に耐乾性と日照制御機能を備えた在来種と外来種の組み合わせが採用されており、ドローンを用いた灌漑効率化も試験導入されていました。
Red Sea Global
環境再生と観光開発を両立する「再生型観光」の取組について説明を受けました。
「再生型観光」とは、従来の「自然破壊型観光」とは異なり、「再生型観光(Regenerative Tourism)」は開発と並行して自然環境を回復・修復する設計思想です。
Red Sea Projectでは、22の島と6つの内陸地帯に計50の高級リゾートホテル群を建設中。マングローブ植林、海洋生態系の回復、サンゴ礁育成といった自然保全活動と、観光インフラが一体的に進行しており、ESG観点での国際的な注目を集めています。
自然保護エリアの再生を基盤にした高級リゾート開発は、持続可能な経済成長と環境価値の両立を目指すサウジアラビアの国家方針を象徴していました。
LCGPA(地元調達・政府調達庁)
LCGPAは、サウジアラビア政府が主導する「現地調達推進」および「外国企業向け入札制度の可視化」を担う機関です。
外国企業向けの購買制度、推奨企業リスト制度、現地化支援の枠組みについてのプレゼンテーションを受けました。
ここでは特に、事業提案の成否が「技術力」や「価格競争力」だけでなく、「誰から推薦されたか」「信頼に足る人物か」といった関係性に大きく左右される文化的側面が紹介され、サウジ市場への参入においては信頼構築の重要性が繰り返し強調されました。
視察先は柔軟に調整可能
本プログラムの訪問先は、視察のテーマや参加企業の関心領域に応じて、柔軟にアレンジが可能です。
たとえば、省エネルギー、スマートシティ、再生可能エネルギー、教育・人材開発など、特定分野に関心をお持ちの場合には、現地の関連官庁・企業・大学・スタートアップとのマッチングを含めた視察設計をアレンジすることができます。

観光・文化体験:変化と伝統の“境界”に立つ
本プログラムの後半では、都市から離れた場所に足を運び、「開発」と「自然」、「変革」と「伝統」が交差するフィールドでの体験を通じて、もうひとつのサウジアラビアの顔に触れる時間が設けられました。
特に印象深かったのが、「Edge of the World(世界の端)」と呼ばれる絶景ポイントの訪問です。
リヤド近郊に位置するこのスポットは、標高約300メートルの断崖絶壁から、地平線の果てまでを一望できる壮大なパノラマビューで知られており、近年は観光開発の対象にもなっています。

300メートルの崖の上から、地平線まで広がる景色を一望できる。せっかく行くので世界の端も経験しましょう。
当日は、夕暮れの大地と静寂の中で、都市とはまったく異なる「時間と空間の流れ」を五感で味わうことができました。
砂漠をラクダで進むツアー形式での移動も体験できるそうです。
この地に立った参加者からは、
「サウジの“変化”は都市だけにあると思っていたが、伝統と自然が息づく場所こそが、未来の問いを投げかけてきた」
という声も上がっており、国家の成長を支える価値観や、土地に根ざしたホスピタリティの精神に触れる貴重な時間となりました。
加えて、マスマク城塞や歴史的スーク(市場)の訪問では、近代都市とは異なる文化層に直に触れ、交易・土地利用・統治の歴史的連続性を学ぶ機会ともなりました。

サウジアラビアの信頼構築の鍵は“対面”にある
本視察を通じて、サウジアラビアにおけるビジネス機会を捉えるうえで不可欠と感じられたのは、対面での関係構築の重要性です。
LCGPAの担当者からは「提案書の精緻さや資料の完成度ではなく、誰と面識があるかが、実際のプロジェクト採用の鍵になる」と明言されました。

メールベースのアプローチや、資料のみのコミュニケーションでは開けない扉が、現地での訪問や対話によって一気に開かれるという場面を複数目にしました。
また、株式会社DG TAKANOが開発・展開している節水ノズル「Bubble90」は、サウジ国内で数十万戸規模での導入が期待されており、その実績の背景には、現地ニーズを踏まえた製品設計や継続的なコミュニケーションによる信頼の蓄積がありました。
製品単体の性能以上に、「課題解決型の設計思想(Problem-Solving Design Philosophy)」そのものが高く評価されていた点は、日本企業が持つ価値提供の方向性を見直す上でも示唆に富むものでした。

参加者の声から見える視察の価値
視察後に実施した振り返りでは、参加者の多くが、サウジアラビアで語られてきた数々の未来都市構想が、単なるビジョンではなく、すでに現地で着工・実行に移されていることに強い衝撃を受けたと述べています。
また、「都市計画のスケールやスピードに圧倒された」「宗教施設での礼拝や市場でのやり取りなど、日常生活の中に思想とビジョンが反映されていた」といった声も寄せられました。
特に印象的だったのは、
「日本国内で当たり前にしていた思考や価値観が通用しない場面に出会い、自分自身の枠組みが揺さぶられた」
「中東に対して抱いていたステレオタイプが、現地の人々の温かさや、開かれた姿勢によって覆された」
というコメントでした。
こうした声は、単に情報や知識を得たというよりも、「現地に立ったこと」「対話したこと」「体験を通じて問い直したこと」こそが、本プログラムの価値であったことを示しています。
サウジアラビア視察の今後に向けて
今回のサウジアラビア視察プログラムは、単なる現地視察や事業調査ではなく、「変化の現場に立ち会い、自らの思考を問い直す機会」であったと位置づけています。
都市・制度・文化・経済が同時に変化する環境下では、データや資料だけでは届かない“温度感”や“スピード感”が存在します。
実際に現地に足を運び、関係者と対話し、風景を見て、人々の生活に触れることで初めて、次の意思決定が可能になると感じています。
今後、タイガーモブでは本視察で得られた学びとネットワークを基盤に、サウジアラビアをはじめとする中東・アジア諸国との協働プログラムを継続的に展開してまいります。
企業向けの実践的視察、教育機関との連携、越境学習を通じた次世代人材の育成など、多角的な形で“世界を学ぶ現場”を創出していく予定です。
他にもインドや東欧、アフリカなど視察プログラムが可能です。視察プログラムにご興味のある企業様、ぜひお問い合わせください。
