【保存版】中学修学旅行の企画・事例集|探究学習とつなげる国内外プログラム

なぜ今、中学修学旅行に「探究的要素」が必要なのか?
これまで修学旅行は観光や体験が中心でしたが、学習指導要領の改訂により「探究的な学び」との接続が求められるようになっています。中学生にも、自ら問いを立て、調べ、仲間と共有し、学びを深める姿勢が重要視されているためです。
そのため、修学旅行は単なる行事ではなく、社会とつながる実践の場として再設計されつつあります。地域課題やSDGs、防災・平和学習、さらには海外での異文化理解など、多様な事例がすでに始まっています。
観光型から探究型へ。この転換は、生徒にとって忘れられない学びの体験をつくる第一歩となります。
中学修学旅行を探究型にする3つの設計ポイント
探究型の修学旅行を成功させるには、「体験をどう設計するか」が重要です。単に行き先を変えるのではなく、学習のプロセス全体に探究的要素を組み込むことで、生徒の成長が大きく変わります。ここでは特に大切な3つの視点を整理します。
1. 事前・事後学習を必ずセットにする
修学旅行での体験は、一度きりの出来事で終わらせてしまうと学びが定着しません。事前学習で「問いを立てる」準備をし、帰校後は「振り返り」や「成果発表」を行うことで、体験が自己理解や社会的関心へと結びつきます。
2. 社会課題や地域資源をテーマに取り入れる
「ただ見て終わる」観光ではなく、訪問先の社会や環境に触れる学びを設計します。たとえば農村地域での持続可能な暮らし、震災被災地での防災学習、地域企業との協働など、中学生でも取り組めるテーマは多様です。
3. 振り返り・発表を通じて学びを言語化する
体験の価値を最大化するには、言語化のプロセスが欠かせません。仲間との対話やプレゼンテーションを通して気づきを共有することで、学びが整理され、自己表現力も育ちます。
この3つの設計を組み込むことで、修学旅行は「楽しい思い出」から「未来につながる学び」へと進化します。
国内の探究型修学旅行の事例
南三陸|復興と持続可能な地域づくりを学ぶ
東日本大震災の被災地・宮城県南三陸町を訪問し、森・里・海がつながる循環型社会のあり方を学ぶプログラムです。地域住民との対話や震災語り部の講話、森づくりや薪割りなどの実践活動を通じて「命のつながり」を体感します。復興の歩みを知り、防災・レジリエンスの視点を育む中学生向けの探究テーマとして有効です。
伊豆大島|地域の魅力を発信する観光大使体験
火山と海に囲まれた伊豆大島で、島の自然や文化を題材に「魅力発信」のプロジェクトに挑戦します。生徒は地域住民や同世代と交流し、取材活動やPR動画の制作を行い、最終的に発表を実施。地域資源を掘り起こして表現する経験は、情報編集力やプレゼン力の育成にもつながります。
諏訪|サイエンス×デザイン思考で未来を描く
長野県諏訪市を舞台に、資源循環やものづくりをテーマにした研修です。廃棄物処理施設や企業の工房を訪れ、アップサイクル体験や科学実験を行いながら、廃材を活用した新しい製品を考案します。デザイン思考を取り入れたグループワークを通じて、科学知識を社会課題の解決に結びつける力を養います。
海外の探究型修学旅行の事例
バリ|循環型社会と環境保全を学ぶ
インドネシア・バリ島では、ゴミ問題や観光開発といった地域課題を題材に、持続可能な社会づくりを学びます。リサイクル工房や環境保護団体を訪問し、現地の若者や起業家と対話。さらに、村でのホームステイを通じて伝統文化と現代課題の両面を体感します。身近な「環境問題」を自分ごと化できるプログラムです。
ネパール|教育とジェンダー課題に向き合う
ネパール農村部を訪れ、教育格差や女性の社会進出をテーマに学ぶ探究型研修です。現地の学校を訪問し、生徒と一緒に授業に参加するほか、女性支援NPOや農村家庭を訪れ、生活のリアルを体感します。発展途上国の現状を知り、「学ぶことの意味」を考えるきっかけとなります。
ザンビア|アフリカの教育と多文化共生を体感
アフリカ・ザンビアで、教育現場や地域社会の課題に直接触れるプログラムです。現地の小学校で子どもたちと交流し、先生や保護者から教育をめぐる課題をヒアリング。文化や生活習慣の違いに戸惑いながらも、多文化共生の意義を体感します。異文化理解と国際協力の視点を養う貴重な機会となります。
公募型プログラムの活用事例
少人数派遣での参加+学校内発表
学校単位で全員を送り出すのは難しい場合でも、公募型プログラムに希望者や選抜された数名を派遣し、帰国後に校内で成果を共有させる形での実施も有効的です。生徒は現地での学びをプレゼンやポスターにまとめ、クラスや学年に発表。探究の成果が学校全体に波及する仕組みになります。
長期休暇を活用した個人参加型
夏休みや春休みに合わせて実施される公募型プログラムは、中学生にとっても参加しやすい仕組みです。例えば、アジアの教育支援や環境保全プロジェクトに参加し、帰国後には作文や研究発表として成果を残すことができます。学校外での経験を教育活動に還元する具体的手段となります。
保護者との連携を伴う研修設計
中学生年代では、海外派遣に不安を持つ保護者も少なくありません。公募型プログラムでは、事前説明会やオンライン報告会を取り入れることで、保護者も安心して参加を後押しできます。結果として家庭と学校の両面から探究活動を支える体制が整い、学びがより持続的になります。
中学修学旅行を企画する際のステップ
1. 教育目的の明確化
まず「なぜこの修学旅行を実施するのか」を明確にすることが重要です。観光中心にするのか、探究型にするのかで設計が大きく変わります。例えば「防災意識を育む」「異文化理解を深める」といった目的を言語化することで、研修全体の軸が定まります。
2. 学習指導要領・探究との接続
修学旅行を一過性のイベントにせず、授業や「総合的な学習の時間」とつなげる工夫が必要です。事前に問いを立て、調べ学習を行い、帰校後に発表やレポートをまとめることで、学びが探究活動として定着します。
3. パートナー選定とプログラム設計
外部事業者や団体を選ぶ際は、教育的視点を共有できるかどうかが鍵です。現地体験をただの「見学」で終わらせず、内省や振り返りの時間を設計できるパートナーを選ぶことで、生徒の学びの深さが大きく変わります。
4. 実施形態の工夫(全員参加型 or 選抜型)
学年全体で行うか、一部の生徒を選抜して実施するかは学校の方針や予算により異なります。全員参加型では基礎的な探究に重点を置き、選抜型では高度な課題解決や国際交流に挑戦させるなど、目的に応じた工夫が有効です。
5. 研修後の成果発表と学校全体への還元
学びを定着させるためには、研修後の発表や共有の場が欠かせません。ポスターセッション、校内展示、動画発表など多様な形で成果を見える化することで、参加生徒の成長を広く共有し、学校全体の探究活動の活性化につながります。
まとめ|中学修学旅行を「学びの場」にアップデートする
中学校の修学旅行は、従来の観光型から「探究型」へと進化しています。背景には、新学習指導要領で求められる「主体的・対話的で深い学び」の重視があります。今や修学旅行は、思い出づくりにとどまらず、社会とつながる実践的な教育の機会として位置づけられています。
国内外の事例を見ても、防災や平和学習、地域資源を活かしたSDGs探究、さらには海外での異文化理解や社会課題に挑むプログラムまで、多様な取り組みが進んでいます。さらに公募型プログラムを取り入れることで、学校規模や予算に応じた柔軟な実施も可能です。
企画を成功させるポイントは、①教育目的の明確化、②探究との接続、③学びを定着させる事前・事後学習の設計です。これらを踏まえた上で、外部パートナーや地域と連携すれば、生徒一人ひとりにとって「未来につながる修学旅行」を実現できます。
本記事で紹介したのは一部の事例に過ぎません。より具体的なプログラム内容や生徒の変容の様子、学校での導入ステップを知りたい方のために、「海外・国内研修事例集」をご用意しています。ぜひ資料をダウンロードいただき、自校に最適な企画づくりにお役立てください。
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